不動産キャリア 新しい地図 ― 未来を描く7つの指針 ― 第6回

競売主任者 ADR調停人 東住協土地活用プランナーRSP協会
宅建士になった、その先は?
AIが台頭し、社会構造が変わりゆく中で、不動産業界に求められる人材像も大きく変化しています。単なる「資格保持者」ではなく、時代の変化を読み解き、顧客の人生に寄り添える真のプロフェッショナルへ。
本連載は、不確実な未来を乗り越えるための「新しい地図」。全7回で、あなたのキャリアデザインをサポートします。

不動産ライター 大槻一敬

地域創生×不動産  ~まちづくりのプロフェッショナル~

人口減少や空き家問題、高齢化による暮らしの変化。いま地域が抱える課題の多くは、不動産と深く結びついています。物件を「売る・貸す」だけでなく、「まち全体の価値をどう高めるか」を考えることが、不動産業に求められる新しい役割です。本稿では、まちづくり・地域活性化に関する資格や学びを通じて、不動産のプロが“まちづくりのプレーヤー”として活躍していく可能性を探ります。

1.不動産業は「地域課題の最前線」にいる仕事

 人口減少や少子高齢化、空き家の増加、商店街の空洞化…。こうしたニュースで語られる「地域課題」は、実はすべて不動産と深く結びついています。どこに、どんな建物を、どの世代に向けて活用していくのか。不動産の選択一つひとつが、まちの将来像やにぎわいを左右します。その意味で、不動産のプロは単なる「物件の仲介人」ではなく、「地域のこれから」に日々関わっている存在だと言えます。とはいえ、地域課題は不動産の知識だけで解決できるものではありません。都市計画、福祉、防災、観光、商店街活性化、子育て支援など、多様なテーマが絡み合います。ここで力を発揮するのが、まちづくりや地域活性化に関する資格や講座です。

2.まちづくり・地域活性化資格がくれる「新しい視点」

 近年、自治体や民間団体、業界団体などが、まちづくりやエリアマネジメント、観光まちづくり、地域再生をテーマにした研修や資格制度を増やしています。これらの学びの場では、 例えば下記などを体系的に学ぶことができます。

  • 住民参加の合意形成の進め方
  • 行政との協働や補助金の活用
  • 公共空間・商店街を活かしたにぎわいづくり
  • 防災・BCPとまちづくりの連携

 不動産の実務だけでは触れる機会の少ない「行政の考え方」や「地域住民の本音」、NPO・地元企業の動きなどを理解できるのは大きなメリットです。物件単体ではなく、「エリア全体の価値をどう上げるか」という視点が身につくことで、提案の内容が自然と変わっていきます。

3.不動産資格×まちづくり資格=地域プロデューサー

 宅地建物取引士や賃貸不動産経営管理士、マンション管理士などの資格は、不動産の「安全・安心な取引」を支えるベースです。ここに、まちづくり・地域活性化系の資格や研修を掛け合わせると、「地域プロデューサー」としての強みが生まれます。たとえば、空き家問題一つをとっても、単に売却や賃貸を提案するだけでなく、下記のような「まち全体のストーリー」を描いた提案ができるようになります。

  • 子育て世帯や高齢者の居住支援拠点として活用する
  • コワーキングスペースやワーケーション施設にリノベーションする
  • 商店街の空き店舗と連携し、通り全体で回遊性を高める

 こうした提案は、オーナーにとっての収益性だけでなく、自治体の施策や地域住民のニーズとも合致しやすくなり、結果として物件の安定稼働や資産価値向上にもつながります。

4.資格取得は「ネットワークづくり」の場でもある

 もう一つ見逃せないのが、資格や講座を通じて得られるネットワークです。講師や共に学ぶ受講生たちは、それぞれの現場で地域課題に向き合う仲間でもあります。不動産会社の立場だけでは届かなかった情報が入ってきたり、新しいプロジェクトの声がかかったりすることもあります。「この空き家を地域のために活かしたい」「駅前再整備の議論に民間の視点がほしい」といった相談が来るきっかけにもなります。資格の名称そのもの以上に、「まちづくりを学び、実践しようとしている人」として顔を覚えてもらうことが、長期的には大きな財産になります。

 

※第7回「~あなたの専門性ロードマップ~」 12月下旬公開予定

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