不動産キャリア 新しい地図 ― 未来を描く7つの指針 ― 第5回

競売主任者 ADR調停人 東住協土地活用プランナーRSP協会
宅建士になった、その先は?
AIが台頭し、社会構造が変わりゆく中で、不動産業界に求められる人材像も大きく変化しています。単なる「資格保持者」ではなく、時代の変化を読み解き、顧客の人生に寄り添える真のプロフェッショナルへ。
本連載は、不確実な未来を乗り越えるための「新しい地図」。全7回で、あなたのキャリアデザインをサポートします。

不動産ライター 大槻一敬

資産価値向上のスペシャリストへ  ~多様化するニーズへの対応力が信頼を生む~

人口減少と高齢化が進み、社会の課題が複雑化する現代において、従来型の「収益重視の不動産経営」だけでは持続的な価値を生み出すことが難しくなっています。次世代の不動産に求められるのは、“社会課題の解決を通じて価値を創造する”という新しい発想です。高齢者や子育て世帯、外国人など多様な人々が共に暮らし、地域が再び活力を取り戻す。その舞台となるのが「社会価値を内包した不動産」です。

1.高齢化社会・相続・税務課題への対応

 高齢化の進展により、相続や生前贈与、財産管理に関する相談は年々増加しています。単なる売買仲介にとどまらず、税務・登記・遺言などの知識を総合的に活用し、「次世代に資産を円滑に引き継ぐ」ための設計を提案できるかが鍵です。税理士や司法書士と連携し、早期の相続対策や節税スキームを提示することで、顧客の安心と信頼を得ることができます。

2.資産活用・土地有効利用の提案力

 遊休地や老朽化建物をどう活かすかは、オーナーにとって最も現実的な課題です。近年では、賃貸住宅や駐車場だけでなく、EV充電ステーション、トランクルーム、コインランドリー、シェアオフィスなど、地域特性や時代のニーズに応じた活用方法が注目されています。事業収益・初期投資・維持管理コストを総合的に比較し、リスクとリターンを見極めた上で最適なプランを提示することが、真の提案力といえます。

3.競売・任意売却など特殊取引への対応

 景気変動や資金繰りの悪化により、競売や任意売却といった特殊取引が発生するケースも少なくありません。こうした局面では、法的手続きや債権者調整の知識を持ち、顧客にとって最も損失の少ない出口戦略を提示できる専門性が求められます。精神的に不安を抱える顧客に寄り添いながら、再出発の道筋を示すことこそ、不動産プロフェッショナルとしての真価が問われる場面です。

4.多様な資産運用ニーズに応える専門性

 顧客のニーズは、単なる売買・賃貸にとどまりません。安定した家賃収入を得たい投資型、節税・承継を重視する保全型、地域活性化や社会貢献を目的とする共創型など、目的は実に多様です。不動産コンサルタントやFP、建築士、土地活用プランナーなど、異分野の専門家と連携し、総合的な資産戦略を立案することで、顧客にとって最も価値ある選択肢を導くことができます。

 不動産の価値は、時代とともに「動かす」から「育てる」へと変化しています。市場や法制度の変化を的確に読み取り、相続・活用・再生・運用の全過程で顧客に寄り添う力。それが、資産価値向上のスペシャリストとして信頼を築く最大の要素です。

 

※第6回「地域創生×不動産~まちづくりのプロフェッショナル~」 12月中旬公開予定

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5

住宅新報の資格情報サイト【不動産ココ】の不動産資格一覧はこちら