行政書士試験のほか、宅建、司法書士、公務員、マンション管理士、管理業務主任者等の講師としても活躍中で、企業・大学・専門学校などにおける講義で人気を博す。「タクト総合研究所」代表。
著書に、「試験にうかる!! 法律のカンタン思考術」「パーフェクト行政書士 入門書」「パーフェクト行政書士 過去問題集」(住宅新報社)、宅建110番シリーズ「スイスイLIVE講義」「過去問 勝利の公式」「1問1答 公式暗記ドリル」(三省堂)、宅建LIVE講義「民法編」「宅建業法編」「法令上の制限編」「税法鑑定関係編」(中央経済社)、「宅建解法テクニック10の法則」(三修社)、「すぐわかる資格ガイド宅建主任」(日本経済新聞社)などがある。
●第5回 ほかの試験の出題から 今年の出題を大予測!
“今年はどういう問題が出題されるのか”を予想するとき、その年のほかの国家試験の出題例をチェックします。その年の出題者側の意識はどこにあるのか、それを伺わせるヒントになるからです。
そこで、つい先日本試験があった宅建試験の民法の出題から、大胆に予想をしてみましょう。
さて、可能性ある論点は……。
☆第1は、民法826条所定の利益相反する行為にあたるか否かは、当該行為の外形で決すべきであって、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とすべきではない(判例)
↓
「親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、かりに親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていなかったとしても、同条2項所定の利益相反する行為にあたるから、親権者が共同相続人である数人の子を代理してした遺産分割の協議は、追認のないかぎり無効である」とした判例。
☆次に、問題から一つ、「債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要があるが、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要がない。」 →答えは×で、それは後半についても「必要がある」からです。
☆また、弁済による代位の効果を規定する501条はぜひ見ておきましょう。
特に、「5号-保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。」→要注意かな
☆保証人は、原則として、黙示更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべき、とする判例。
☆賃貸家屋の破損、腐蝕の状況が居住に著しい支障を生ずるほどでないような場合には、賃借人は賃貸人の賃貸家屋修繕義務の不履行を理由に賃料全部の支払を拒むことができない、とした判例。
☆推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合「相続させる」旨の遺言は無効とする、とした判例。
※なお、「相続させる」旨の遺言は、遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し、当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有するもの
以上、出題される可能性があると予測します。
さて、今週末はいよいよ本番です。皆さん、リラックスして悔いのないよう力を出し切ってください。皆さんの努力が実を結ばれることを祈っています!
前回予告したとおり、組合せ問題の解き方を説明しましょう。
組合せ問題は、まずア~オなど複数の選択肢があって、さらにそれらを組み合わせた肢が1~5まであるというスタイルで出題されます。
解き方としては、自分で自信がある所から解くのがいいでしょう(例えばイから解いても構いません)。注意するのは、肢ア~オを全部読んでから個別の肢について検討するのではなく、1肢ずつ順番に検討していくほうがいいということです。この手順さえ間違えなければ大丈夫。なぜならこの手順の場合、肢ア~オ全部の判断はできなくても、途中で正解を導き出すこともできるからです。読まなくてもいい肢が出てくるのです。
昨年の会社法の問題(問38)は、次のような形式で出題されました。
「1 ア・イ 2 ア・オ 3 イ・ウ 4 ウ・エ 5 エ・オ 答え 肢2 」
この問題、おそらく多くの人が自信を持って正誤を判断できたのは、肢イとエくらいだったのではないでしょうか。よくても肢ウがなんとか判断できた、くらいの人が多かったと思われます。ところが最低限肢イとエが×だと分かったところで、答えの肢2を導くことはできたわけです。
まず、肢アを読んで、「あー、よく分からん △」で、詳しくはチェックしない。
次の肢イを読んで「これは自信を持って、×だ」と判断します。そこで組合せに肢イが含まれる肢1、3を消去することができます。
その後、肢ウが△でも、肢エが×だと判断できれば、肢4、5も消去し、結果として肢2のみが残るのです。ここまででもう答えが出せたので、肢オを読む必要はもはやありません。仮に全問解き終わった後にまだ時間があれば、改めて読み返してもいいかもしれませんが……。
こうした解き方は、慣れればすぐ身に付きます。過去3年分の組合せ問題をすぐに解き、訓練しておきましょう。
今回は、行政書士試験の問題形式についてコメントをしてみます。ちょっとした心構えをしておくだけで、試験に役立つポイントがあるのです。
試験問題には、択一式、多肢選択式、記述式の3つの形式があります。なかでも択一式の形式が、最も多く出題されます。その解き方をみておきましょう。備えあれば憂いなしですから。
まず、単純な五肢択一式についてです。通常は1肢ずつ解いていき、答えを導き出します。一番オーソドックスな解き方です。
ところが、どうしても2肢の間でどちらが正解か、判断に迷ってしまったらどうしますか? そうした時は、残った肢同士を比較しより適切だと思われるほうを選ぶというテクニックが使えます。また、消去法(これも重要なテクニック)を駆使する場面も出てくるでしょう。
ただし、組合せ問題や個数問題の場合、肢同士の比較や消去法といったテクニックは使えません。
なかでも個数問題は、一つひとつの肢の判断が勝負で、正解を選ぶのが最も困難な形式です。頭の痛いところですが、救いは、個数問題の出題数は、決して多くないということです。平成24年度試験における出題数は、わずか2問でした。その程度であれば、あまり神経質に考えるのも逆によくないでしょう。
一方で組合せ問題については、そうはいきません。個数問題よりもはるかに出題数が多いのです。平成24年度試験において、法令で5問、一般知識等で6問出題されました。合計11問ですから、合格するためにはこの個数問題の解き方を身に付けておかないといけませんね。
さて、次回は個数問題の具体的な対策につて説明します。
この時期、ぜひ意識してほしいことがあります。それは、判決文に関する問題を多く解くことです。
その理由は……。
理由1 判決文は、過去問によく出題されていて、今後も出題される可能性が高いからです。例えば、平成24年度本試験では、憲法(問6)、行政法(問19)で出題され、多肢選択式でも出題されました。
理由2 (実はこちらを主張したかったのですが)判決文を読むことで、法律的な文章を読む感覚が研ぎ澄まされるということです。
どこが結論なのか、どのような理由を挙げているのかなどを意識しながら読むことで、法的な感覚が自然と鋭敏になってくるでしょう。まさに、試験直前のこの時期に最適な訓練といえます。
さて、ここで判決文に関する問題の解き方を、簡単に述べておきます。
五肢択一式の問題においては、判決文を読む前に、まず各肢に目を通しておくといいでしょう。
平成24年問6(国籍取得の際の取扱の区別)の各肢を見ると、肢3だけ“浮いている”ことに気が付きます。肢だけを見ても判断できるのです。そこら辺の詳しい解説は、『パーフェクト行政書士 過去問題集』をぜひご覧ください。
もちろん、肢だけではすぐに判断できないことも多いでしょう。そうした場合、判決文を(強弱を付けて)読みながら、まず、結論部分を探しましょう。それが何より重要です。次に、結論の理由付けを意識しましょう。それらを意識しながら、できるだけ多くの判決文を読んでおくと、いい訓練になるはずです。
多肢選択式の解き方は、空欄の前後の言葉をしっかりと把握し、その内容から答えを導き出すようにするとよいでしょう。
本試験まで、あと1カ月を切りました。
それでも今年は、まだ暑い日が続いています。体調に気をつけてください。私の周りでも、風邪を引いている人が多くなってきましたから。
さて、今の時期は、演習に費やす時間が多くなってきているころだと思います。時間を計って過去問を解いてみたり、予想問題を解いてみたり、そんなこともしているのではないでしょうか。
そうした際に、ぜひ次の点を意識してみてください。
まず、リズム良く問題文を読めているかどうか。
次に、問題文のキーワードにきちんとチェックを入れられるかどうか(読みながらアンダーラインを引いたり、四角枠で囲んだりすると効果的)。また、問題の内容に加え、関連する事項がすぐに思い出せるかどうか、です。
さらに、すべての問題が一定の速度で読めているかどうかも、気にしてみてください。
時間がかかりすぎる問題は、まだ内容が完全に理解できていない可能性があります。
最終的には、本試験で要求される速度で読めるようにならなければなりません。今の時期から、そうした読み方を身体にしみこませておきましょう。
全体としては一定のリズムを保ちながら、パーツごとに強弱をつけた読み方を意識するといいでしょう。