住み継ぐ住宅を残せるかどうか。令和8年度税制改正大綱と新たな住生活基本計画(中間まとめ)は、住宅政策の軸足が「新築」から「既存」「ストック」へと移行していることを明確に示した。量の確保から質の向上へ。省エネ性能や耐震性、管理状況といった〝中身〟を重視し、良質な住宅ストックを循環させることが政策の中心に据えられている。既存住宅はもはや補完的存在ではなく、市場を支える重要な柱としての位置付けが強まりつつある。
▼この流れは、既存住宅の流通やリノベーションに取り組んできた事業者にとって、確かな追い風である。住生活基本計画が示すのは、性能や履歴が「見える」住宅ストックの蓄積だ。見た目の刷新や価格競争だけではなく、どの性能がどこまで向上したのかを説明できる力が問われる。インスペクションや性能表示、履歴情報の整備は、差別化の手段から信頼を得るための基盤へと変わりつつある。
▼真のストック新時代に求められるのは、制度に合わせる姿勢ではなく、制度を使いこなす覚悟である。既存住宅を「売れる商品」にとどめず、「住み続けたい住まい」として社会に残していく。その価値を生活者の言葉で翻訳し、次の世代へ橋渡しする役割は、流通・リノベ事業者にしか担えない。政策の方向性は整いつつある。市場の評価を決めるのは、ストックの質を語り、磨き続ける現場の本気度である。



