総合 売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(14) 住宅地図、登記情報など5点セット持参 「市区町村役場の調査 (1)」

 市区町村役場での調査は「買主が不動産の利用について制限や不利益を被らないか」を主眼に行っていく。「それだったら買わなかった」を避けるためだ。より具体的には主に2つ。1つ目は買主にとって希望する建物が(再)建築できるかどうか、2つ目は買主がイメージする生活を送ることができるかどうか、この2つだ。(再)建築できないならその根拠や、できるようにする方法、生活に制限がかかるならその根拠や緩和方法を調べることになる。用途地域や建ぺい率、容積率、前面道路、ハザード情報などを機械的に調べるのではなく、この2点を知る目的をもって調査をしていきたい。

 なお一部の市区町村役場では法令上の制限を中心にネット上で調査ができる。ただ、前号で伝えたが、各課の担当者への聞き方によって解釈や結果が変わることが多い。そのため、市区町村役場に赴き、調査を行うのが基本で、ネットでの調査は事前や確認のための調査と補足的な扱いとするのがいいだろう。

 調査には、(1)住宅地図、(2)登記情報と公図、(3)媒介契約書(委任状)、(4)デジカメ(スマホ)、(5)メモ用紙、この5点は必ず持っていくようにしたい。住宅地図と登記情報、公図は各課で調べる際に不動産を特定する意味で必要となる。担当者からも「住宅地図お持ちですか」「地番は何番ですか」と尋ねられることも多い。持参していればスムーズに調査できる。

 また、売主から署名捺印をもらった媒介契約書(委任状)は評価証明書や給水装置図面を取得するのに必要となる。ほかにも個人情報レベルが高い書類を取得する際には求められることがある。首都圏近郊以外の市区町村役場では調査結果を印刷物としてはくれず「書き写しなら可能です」「写メで撮ってもいいですよ」と言われることがあるので、当然携帯していると思うがスマホやメモ用紙は持っていかないと仕事にならない。

 市区町村役場に着いたら効率よく調査していくことになるが、不動産の全体像から各部へ流れて把握していくほうが頭の中が整理できて分かりやすい。そのため筆者はまずは都市計画課から調査していき、用途地域など都市計画法やその関連法、各種条例について確認をして全体像を把握している。問題や不明な点が出れば各課で確認をしていけばいい。なお、不動産調査に慣れている市区町村役場であれば、どこの課に行けば知りたい情報が得られるかを一覧表にしている。それを入手するのもよい。また、建築や利用に関する条例は都市計画課で分かることが多いので調査拠点として最適だ。

 次回は道路課での調査から始めたい。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。