不動産企業の経営者の視点から人材はどう見えるのか。
20年以上、不動産業・建築業・行政書士業を経営しているアセットグループ代表の大城嗣博氏が、経営者の本音に迫る。
今回は、株式会社リライフの鈴木卓人代表取締役社長に話を聞いた。

リライフ 鈴木卓人代表取締役社長

大城:現在の事業の内容は?
鈴木:「創業から賃貸仲介事業がコア事業になっています。仲介のモデルとしては、私たちは狭小商圏・高品質モデルといっていますが、なるべくエリアを狭めて、狭めたエリアの中でクオリティの高い情報をお客様にお届けすることを心掛けてやっています。
結構ニッチな場所に店舗があったりします。一般的に店舗の周り、例えば2000件とか3000件というところが多いと思いますが、弊社はだいたい500件ぐらいの物件を、室内の細かな写真や動画、オーナー情報といった、かなり細かいところまでしっかりとって、それをネットに掲載して、ご紹介するかたちをとっています」

 

大城:賃貸仲介以外の事業に関しては?
鈴木:「売買仲介事業、PM事業、リフォーム、リノベーション、ここら辺が大きいところです。あまり取引の件数はまだないですが、投資用不動産の仲介や、テナントの仲介も行っています。
賃貸仲介のウエイトは、全体の7割弱で、客付けの方が多い。9割が客付けです。今は大手の管理会社さんと提携させていただいて、直接デベロッパーさんや管理会社さんから物件をおろしてもらうことも多く、他社の物件を使うにしても、独自のルートで集めた物件とかも結構多い。
ただ、客付け、元付け比率がかなりリスキーだと思うので、この比率を半々に近いものにしていくというのは当然やっていきます。
賃貸仲介においては、不動産テックをやっています。もっと短い時間で高収益っていうのはテクノロジーを使うことで可能になります。システムを自社開発しており、賃貸仲介のあり方をもう少し合理化できるのではないかと思っています」

 

大城:採用にあたっては、新卒、中途はどんな比率?
鈴木:「3、4年前ぐらいから新卒をかなり強化して採用しています。中途採用はやめてないですが、年間の採用人数からすると、今、新卒の方がやや多いぐらいです」

 

大城:中途採用の方に求めるのは?
鈴木:「中途は、やはり即戦力を求めています。弊社の場合は、特に不動産の業歴は全く求めていないので、業界的な即戦力というよりは、社会経験を基にしたコミュニケーション能力であったり、営業能力、適応力といった営業適正ですね。それがある方を中途で採用して、不動産は後から教えしていき、短期的に数字を取っていけるような方というのがだいたい中途のイメージですね」

 

大城:中途採用時の保有資格要件というのは、どんな位置付けか?
鈴木:「宅建士はあればよいですが、必須にはしていません。その他の不動産資格もあったほうが、当然評価します。PM系の資格とか、ファイナンシャルプランナーを持っている人も評価しますが、必須にはなっていません。
マインド面で言うと、私たちの会社自体かなり成長志向が強い会社なので、個人の方も向上心が強い方、かつホスピタリティ精神というか、お客様や社員に対しても、誠実さというのは大事にしています。
テクニカルな面としては、やはり即戦力として求めているので、営業能力、簡単に言うと数字が取れる営業マンであれば、テクニカルな面はオーケーだと思います。ただし、営業はできるが、あまり協調性がなく、誠実な対応もしない、ホスピタリティなく対応しても『数字になればいいでしょ』っていう人は採っていませんね」

 

大城:システム関係を自社開発としたのは?
鈴木:「私は社会に出てからずっとこの賃貸仲介の営業職からスタートしました。自分で営業やっているときも、店舗の責任者をやっているときも、より業務の簡素化、短縮、こんなことができるっていう、自分でやりながら日々感じていました。自分で会社をやるからには、その今まで自分が現場で感じてきたことの不合理を解消していきたいというのが(自社開発をした)そもそもの思いです」

 

大城:現場のアナログとデジタルの融合はどうしているのか。
鈴木:「新しいシステムをどんどん導入すると、営業としては、やはり最初は嫌いますが、弊社は新しいものに取り組んでいくんだよ、という教育を常にしています。同じことばかりやっていると厳しくなるよ、とも常々言っています」

 

大城:だた、システム開発も、営業を分からないと、本当に役に立つシステムになるのか分からない。
鈴木:「その架け橋をしている重要な役目を担っているのが、私も含めた創業から長いキャリアがある者ですね。半分は開発側で、テクノロジーの知識を蓄えている人が、いま数名います。そこで開発と現場のコミュニケーションロスみたいなものを抑えていこうとしています。
PMの部隊と現場の部隊も実は共通言語もないとしっかりとシナジーが効きません。いま、現場で賃貸仲介を店舗ではやっていますが、そこでお客様から売買の話になった時に、本社に送客していますが、そこもやはり共通の言語理解がないと、ということなります。いま弊社が事業の多角化をやっていく上では、事業間シナジーがしっかり効くというように、協調性、コミュニケーション能力というのは非常に重要と思っています。
ジョブローテーションというのは非常に重要視していて、共通言語を持つために多様な経験が必要で、そのためのいま事業の多角化なのだということは、社員にメッセージ性をかなり強くもって言っています。
いろいろな架け橋になれる人というのは、弊社の中でも重要なポストについていますね」

大城:社員教育、育成は?
鈴木:「新卒に関しては、入社から約1カ月間の研修プログラムを毎年用意していて、不動産仲介営業職としての基礎的なことを教えていきます。あとはOJTで店舗に入った後に店長が教えています。
中途に関しては、入社後3日間は基礎的なことを教えています。その後店舗でのOJTに入りますが、新卒、中途共にフォローアップ研修をやっています。本社で1カ月目フォローアップ、2カ月目フォローアップ、3カ月目フォローアップの合計3回の研修をやっていますね。
あと、宅建の講義は、ずっとやっていて、資格取得を推進しています。資格取得後は、社内に宅建士のグループのようなものがあって、SNSで、こういったところ、お客さんに突っ込まれてちょっと回答に困っちゃったとかみたいなことを投稿してもらって、こちらの誰か答えられる人が答えるなど、そういう基盤がありますね。あとは月に1回、まあ不定期ですけど、宅建士だけを集めて、最新の法改正とかあったときには説明するということをやっています」

 

大城:採用に際して、ホスピタリティが同じだったら、資格を持っている、持ってないが選択基準に影響は?
鈴木:「もちろん、あります。それは実務的に有利というところもあるし、宅建取得にしろ、何らかの資格にしろ、努力量が見えるじゃないですか、その努力できる方なのだと判断をするので、資格を持っているイコールその資格がすべてではなくて、人間性も見えますね」

 

大城:最後に、御社に入社したい、もしくは入社しようかと考え始めるような方に対してのメッセージは?
鈴木:「会社のメッセージとしては、成長志向が強くて、誰かの人生が変われるきっかけを作りたいという、非常に強い思いがあるので、今までのキャリアがどうとかあまり気にせずにチャレンジをしたい方、チャレンジして自分を変えて、より高みを目指していきたい、向上心のある方はぜひ受け入れたいというか、一緒にやりたいという思いがありますね。
経営理念には『恩返し』というものを掲げています。恩返しの対象としては、お客様と社員を対象としているのですよ。何のために会社を作って運営するのかっていうと、お客様がハッピーで、関わる仲間、社員がハッピーであるということが一番のコアな部分の経営理念の考え方です。
社員のハッピーは何かと思うと、私は『お金』『時間』『やりがい』だと思うのです。これらを、本当に社員に配ろうとすると、企業成長がマストだと思っているのですよね。会社大きくなって、生産性を高めていかないと社員の給料は増えないですし、働く時間も短くならないですし、ポストをどんどん生んでいかないと、やりがいの持てる仕事とかチャレンジができなくなってしまう。
そう考え、社員のため会社成長がマストだとすると、個人の成長がマストなので、向上心を持って成長したいということを、非常に強いメッセージとして伝えています」

 

 

この記事内で紹介されている資格
宅地建物取引士
ファイナンシャルプランナー(FP)

その他の不動産実務に役立つ資格はこちら

 

シン・人材像

第1回 NKコンサルティング 奈良桂樹代表取締役

第2回 レアルコンサルティング 安次富勝成代表取締役

第3回 川木建設 鈴木健二代表取締役社長

第4回 東宝ハウスホールディングス 佐井川稔代表取締役社長