21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本社解答と解説 【問31~40】

<< 問21~30へ戻る

 

【問 31】

管理業法における賃貸住宅管理業者の業務に関する次の記述のう
ち、誤っているものはどれか。

 

1 賃貸住宅管理業者は、使用人その他の従業者に、その従業者であることを
証する証明書を携帯させなければならない。
2 賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務において受領する家
賃、敷金、共益費その他の金銭を、自己の固有財産及び他の管理受託契約に
基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別し
て管理しなければならない。
3 賃貸住宅管理業者は、営業所又は事務所ごとに、業務に関する帳簿を備え
付け、委託者ごとに管理受託契約について契約年月日等の事項を記載して保
存しなければならない。
4 賃貸住宅管理業者は、再委託先が賃貸住宅管理業者であれば、管理業務の
全部を複数の者に分割して再委託することができる。

 

正 解

 

 

①は正しい。賃貸住宅管理業法17条1項の通りである。

 

②は正しい。同法16条の通りである。

 

③は正しい。同法18条の通りである。

 

④は誤りで、正解。同法15条により、管理業務の全部を再委託することは禁止されており、分割して再委託する場合であっても全部の再委託はできない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 32】

管理業法における登録及び業務に関する次の記述のうち、正しい
ものはどれか。

 

1 賃貸住宅管理業者である個人が死亡したときは、その相続人は、死亡日か
ら 30 日以内に国土交通大臣に届け出なければならない。
2 賃貸住宅管理業者である法人が合併により消滅したときは、その法人の代
表役員であった者が国土交通大臣に届け出なくても、賃貸住宅管理業の登録
は効力を失う。
3 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者は、賃貸住宅管理業者の役員
となることはできないが、業務管理者となることができる。
4 賃貸住宅管理業者は、営業所又は事務所ごとに掲示しなければならない標
識について公衆の見やすい場所を確保できない場合、インターネットのホー
ムページに掲示することができる。

 

正 解

 

 

①は誤り。賃貸住宅管理業法9条1項本文及び同1号で、賃貸住宅管理業者である個人が死亡したときは、その相続人は死亡を知った日から30日以内に国土交通大臣に届けなければならないとされている。

 

②は正しく、正解。同法9条2項及び同条1項2号により正しい。

 

③は誤り。業務管理者の資格として登録拒否事由に該当しないことが必要であり、破産手続開始決定を受けて復権を得ないものは同法6条1項2号によって登録拒否事由とされている。

 

④は誤り。同法19条で国土交通省令で定める様式の標識を掲示することが必要とされており、ホームページに掲載することは認めれていない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

【問 33】

特定賃貸借標準契約書(国土交通省不動産・建設経済局令和3年
4月 23 日更新。以下、各問において同じ。)に関する次の記述のうち、最も適切
なものはどれか。ただし、特約はないものとする。

 

1 特定賃貸借標準契約書では、賃貸住宅内の修繕を借主が実施するとしてい
る場合には、転貸借契約終了時の賃貸住宅内の修繕は、貸主と協議をするこ
となく借主がその内容及び方法を決定することができるとされている。
2 特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約を定期建物賃貸借にするか否かは、
借主と転借人との間の合意により自由に決定することができるとされている。
3 特定賃貸借標準契約書では、転借人が賃貸借の目的物を反社会的勢力の事
務所に供していた場合には、借主は、催告をすることなく、転貸借契約を解
除することができるとされている。
4 特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約から生じる転借料と転借人から交
付された敷金は、借主の固有の財産及び他の貸主の財産と分別したうえで、
まとめて管理することができるとされている。

 

正 解

 

 

①は不適切。特定賃貸借標準契約書において、賃貸住宅内の修繕を賃借人が実施できる場合に、転貸借終了時の賃貸住宅内の修繕の内容及び方法を賃借人が決定できるとはされていない。

 

②は不適切。同契約書において転貸借契約につき定期建物賃貸借契約を賃借人と転借人との合意で自由に決定できるとはされていない(同契約書頭書(8)転貸の条件)。

 

③は適切で、正解。同契約書9条1項ただし書、18条4項により適切な記述である。

 

④は不適切。同契約書において、転借人から交付された敷金について分別管理する方法を記載することとされている(同契約書頭書(9))。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 34】

特定賃貸借標準契約書に関する次の記述のうち、最も不適切なも
のはどれか。ただし、特約はないものとする。

 

1 特定賃貸借標準契約書では、借主が賃貸住宅の維持保全をするに当たり、
特定賃貸借契約締結時に貸主から借主に対し必要な情報の提供がなかったこ
とにより借主に損害が生じた場合には、その損害につき貸主に負担を求める
ことができるとされている。
2 特定賃貸借標準契約書では、貸主が賃貸住宅の修繕を行う場合は、貸主は
あらかじめ自らその旨を転借人に通知しなければならないとされている。
3 特定賃貸借標準契約書では、賃貸住宅の修繕に係る費用については、借主
又は転借人の責めに帰すべき事由によって必要となったもの以外であっても、
貸主に請求できないものがあるとされている。
4 特定賃貸借標準契約書では、借主が行う賃貸住宅の維持保全の内容及び借
主の連絡先については、転借人に対し、書面又は電磁的方法による通知をし
なければならないとされている。

 

正 解

 

 

①は適切。特定賃貸借標準契約書10条6項に記載されている。なお、本条は貸主が借主であるサブリース業者に適切な情報を提供しなかった場合に、サブリース業者が不要な支出をせざるを得なくなること等を考慮したものである。

 

②は不適切で、正解。通知は、貸主が自ら行うのではなく、サブリース業者を通じて行う(特定賃貸借標準契約書11条4項)。

 

③は適切。特定賃貸借標準契約書11条2項に記載されている。借主又は転借人の責めに帰すべき事由によって必要となったもの以外でも、同契約書の頭書(6)でサブリース業者が実施するとされている修繕は貸主に請求できない。なお、頭書(6)には、サブリース業者が行う維持保全の実施方法実施について、その箇所・内容・頻度・委託先等を記載する欄がある。

 

④は適切。特定賃貸借標準契約書12条に記載されている。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 35】
特定転貸事業者の貸主への報告に関する次の記述のうち、特定賃
貸借標準契約書によれば最も適切なものはどれか。ただし、特約はないものと
する。

 

1 貸主との合意に基づき定めた期日において、賃貸住宅の維持保全の実施状
況や転貸条件の遵守状況、転借人からの転借料の収納状況について、貸主に
対し書面を交付して定期報告を行わなければならない。
2 貸主は、借主との合意に基づき定めた期日以外であっても、必要があると
認めるときは、借主に対し、維持保全の実施状況に関して報告を求めること
ができる。
3 修繕を必要とする箇所を発見した場合、それが緊急を要する状況ではなか
ったときには、定期報告において貸主に書面を交付して報告を行うことがで
きる。
4 自然災害が発生し緊急に修繕を行う必要が生じたため、貸主の承認を受け
る時間的な余裕がなく、承認を受けずに当該業務を実施したときは、貸主へ
の報告をする必要はない。

 

 

正 解

 

 

①は不適切。報告を書面ですることまでは定めていない(特定賃貸借標準契約書13条1項)。したがって、書面を交付して定期報告を行わなければならないわけではない。

 

②は適切で、正解。特定賃貸借標準契約書13条2項。

 

③は不適切。緊急を要する状況ではなかった場合でも、速やかに通知しなければならず、定期報告で行うことができるものではない(特定賃貸借標準契約書11条5項)。

 

④は不適切。速やかに書面で通知しなければならない(特定賃貸借標準契約書11条7項)。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 36】

特定転貸事業者が特定賃貸借契約を締結したときに賃貸人に対し
て交付しなければならない書面(以下、「特定賃貸借契約締結時書面」という。)
に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

1 特定賃貸借契約締結時書面は、特定賃貸借契約書と同時に賃貸人に交付す
る必要はない。
2 特定転貸事業者が特定賃貸借契約を更新する際、賃貸人に支払う家賃を減
額するのみでその他の条件に変更がなければ、特定賃貸借契約締結時書面の
交付は不要である。
3 特定賃貸借契約締結時書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する
場合、あらかじめ相手方の承諾を得なければならない。
4 特定転貸事業者が特定賃貸借契約締結時書面の交付を怠った場合、50 万円
以下の罰金に処される場合がある。

 

正 解

 

 

①は正しい。契約後に遅滞なく交付すればよい。特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結したときは、当該特定賃貸借契約の相手方に対し、遅滞なく、法定の事項を記載した書面を交付しなければならない(賃貸住宅管理業法31条1項)。したがって、特定賃貸借契約と同時に交付する必要はない。

 

②は誤りで、正解。家賃に関する事項を変更する場合は書面の交付が必要である。契約を更新する際に、「特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項」に変更がある場合、特定賃貸借契約締結時書面の交付が必要である(賃貸住宅管理業法31条1項2号)。家賃の減額はこれに該当する。したがって、特定転貸事業者は、特定賃貸借契約締結時書面を更新時に交付しなければならない。

 

③は正しい。賃貸住宅管理業法31条2項

 

④は正しい。賃貸住宅管理業法43条

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 37】
特定転貸事業者が特定賃貸借契約を締結しようとするときに契約
の相手方となろうとする者に説明しなければならない事項に関する次の記述の
うち、正しいものはいくつあるか。

 

ア 特定賃貸借契約の対象となる賃貸住宅の面積
イ 特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃の設定根拠
ウ 特定賃貸借契約の相手方に支払う敷金がある場合はその額
エ 特定転貸事業者が賃貸住宅の維持保全を行う回数や頻度

 

1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ

 

正 解

 

 

アは正しい。賃貸住宅管理業法施行規則46条2号

 

イは正しい。賃貸住宅管理業法施行規則46条3号。なお、家賃の設定根拠については、近傍同種の家賃相場を示すなどして記載の上、説明しなければならない。

 

ウは正しい。賃貸住宅管理業法施行規則46条3号。なお、ガイドラインでは、特定転貸事業者が賃貸人に支払う家賃の額、家賃の設定根拠、支払期限、支払い方法、家賃改定日等について記載し、説明すること(家賃の他、敷金がある場合も同様とする)と記述されている。

 

エは正しい。賃貸住宅管理業法施行規則46条4号。なお、特定転貸事業者が行う賃貸住宅管理業法2条2項規定の維持保全の内容について、回数や頻度を明示して可能な限り具体的に記載し、説明しなければならない。

 

以上から、すべて正しく、正解は④となる。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 38】
特定転貸事業者が、特定賃貸借契約を締結しようとする際に行う相手方への説明に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

1 説明の前に管理業法第 30 条に規定する書面(以下、本問において「特定賃
貸借契約重要事項説明書」という。)等を送付しておき、送付から一定期間後
に説明を実施した上で速やかに契約書を取り交わした。
2 相手方とは、既に別の賃貸住宅について特定賃貸借契約を締結していたた
め、その契約と同じ内容については特定賃貸借契約重要事項説明書への記載
を省略した。
3 相手方への説明を、賃貸不動産経営管理士の資格を有しない従業者に行わ
せた。
4 賃貸住宅の修繕は、特定転貸事業者が指定した業者に施工させなければな
らないという条件を契約に盛り込むこととし、その旨説明した。

 

 

正 解

 

 

①は適切。重要事項説明については、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者が契約内容とリスク事項を十分に理解した上で契約を締結できるよう、説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことが望ましいとされている。

 

②は不適切で、正解。相手方に一定の知識があっても省略できない重要事項説明となる。相手方が特定賃貸借契約について一定の知識や経験があったとしても、法定の事項を書面に記載し、十分な説明をする必要がある。したがって、既に別の賃貸住宅について特定賃貸借契約を締結していた場合でも、特定賃貸借契約重要事項説明書への記載を省略できない。

 

③は適切。重要事項説明は、特定転貸事業者自らが行う必要があるが、実際に説明を担当する者の資格要件はない。ただし、一定の実務経験を有する者や賃貸不動産経営管理士等、専門的な知識及び経験を有する者によって行われることが望ましい。

 

④は適切。賃貸住宅管理業法30条1項、同規則46条5号。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 39】
特定転貸事業者が特定賃貸借契約の条件について広告をする際に
禁止される行為に当たるものに関する次の記述のうち、正しいものはいくつあ
るか。

 

ア 実際の周辺相場について調査していなかったが、「周辺相場より高い家賃で
借り上げ」と表示した。
イ 大規模修繕積立金として月々の家賃から一定額を差し引く一方、日常修繕
の費用負担は賃貸人に求めない予定であったため、「修繕費負担なし」と表示
した。
ウ 契約を解除する場合には、月額家賃の数か月を支払う必要があるにもかか
わらず、その旨を記載せずに、「いつでも借り上げ契約は解除できます」と表
示した。
エ 借地借家法上の賃料減額請求が可能であるにもかかわらず、その旨を表示
せず、「10 年家賃保証」と表示した。

 

1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ

 

正 解

 

 

アは正しい。本問の表示は、「特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項」について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示(誇大広告等)に該当する(賃貸住宅管理業法施行規則43条1号)。

 

イは正しい。本問の表示は、「賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項」についての誇大広告等に該当する(賃貸住宅管理業法施行規則43条3号)。

 

ウは正しい。本問の表示は、「特定賃貸借契約の解除に関する事項」についての誇大広告等に該当する(賃貸住宅管理業法施行規則43条4号)。

 

エは正しい。本問の表示は、「特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項」についての誇大広告等に該当する(賃貸住宅管理業法施行規則43条1号)。

 

以上からすべて正しく、正解は④となる。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

【問 40】
特定賃貸借契約の締結について不当な勧誘を禁止される「勧誘者」
に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

 

ア 勧誘者は、特定転貸事業者から委託料を受け取って勧誘の委託を受けた者
に限られない。
イ 勧誘者が勧誘行為を第三者に再委託した場合、再委託を受けた第三者も勧
誘者に該当する。
ウ 特定転貸事業者である親会社との間で特定賃貸借契約を結ぶよう勧める場
合の子会社は、勧誘者にあたらない。
エ 勧誘者には不当な勧誘等が禁止されるが、誇大広告等の禁止は適用されな
い。

 

1 ア、イ
2 イ、ウ
3 ウ、エ
4 ア、エ

 

正 解

 

 

アは正しい。「勧誘者」とは、特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいい、特定の特定転貸事業者と特定の関係性を有する者であって、当該特定転貸事業者の特定賃貸借契約の締結に向けた勧誘を行う者をいう(賃貸住宅管理業法28条)。委託料を受け取っていない場合でも勧誘者に該当する可能性がある。

 

イは正しい。勧誘者が勧誘行為を第三者に再委託した場合は、その第三者も勧誘者に該当する。

 

ウは誤り。特定転貸事業者である親会社との間で特定賃貸借契約を結ぶよう勧める場合の子会社であっても、勧誘者にあたる。

 

エは誤り。特定転貸事業者と共に勧誘者も行為規制の主体とされている。規定は賃貸住宅管理業法28条の誇大広告等の禁止と29条の不当な勧誘等の禁止の2カ条。したがって、勧誘者には不当な勧誘等が禁止も誇大広告等の禁止も適用がある。

 

以上から、アとイが正しく、正解は①となる。

 

(『住宅新報』2021年11月30日号「21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本紙 回答と解説」より)

 

問41~50へ続く >>

 

賃貸不動産経営管理士・次回の試験は11月! >>