不動産企業の経営者の視点から人材はどう見えるのか。
20年以上、不動産業・建築業・行政書士業を経営しているアセットグループ代表の大城嗣博氏が、経営者の本音に迫る。
NKコンサルティングの奈良桂樹代表取締役に話を聞いた。

大城:まずは、どのような会社なのか。
奈良:「私は大手の不動産会社に勤務していました。地権者の権利調整を得意としていた会社にいましたので、弊社は権利調整や課題解決のソリューションを提供する業務を柱として行っています。今一番多いのは相続対策と借地・底地の整理で、賃貸は入居者管理をメインにやっています。
それ以外では、建売事業をやっておりまして、地元の市川市に限り、まちづくりを行っています。元々は、借地・底地の権利関係の整理をする際に単に売却するのではなく、付加価値を付けるために建売を始めました。賃貸管理については、空室対策もオーナーさんから頼まれますので、賃貸物件の管理や借り上げ、物件の所有もしています。建売は自社で販売しておりますが、賃貸は仲介会社を通しています」

大城:ソリューション、建売、管理では求める資質が違うのでは?
奈良:「新卒採用するときによく言っているのが、我々は“貸主、売主主義”という言葉です。我々の社員は全員オーナーだという立場であり、自分で賃貸アパートを持てば自分で管理するだろうし、建売を自分で作れば自分で売るのは当然の話。社員には売主、貸主の立場で仕事をしなさいと教育しています。土地を買って賃貸事業をしていますが、そのときには土地の購入から建築、入居者募集、管理まで一貫して一人の担当者にやってもらっています」

大城:売買・賃貸仲介を主軸に置かない理由は?
奈良:「“自分のやりたい仕事、好きな仕事をする”ということが、弊社の存続意義ですので、仲介は仕事を自分たちでコントロールできないということが理由です。仲介は買いたい人や借りたい人の意思が強いので、弊社の方針としてお断りをしています。」

大城:ソリューションで求められる知識や資質は?
奈良:「オーナーの問題点を探って、それを皆で解決していくことをしています。オーナーの問題点を探るには、知識よりも経験が重要です。知識があると問題を軽くみてしまいがちです。訴訟をすれば解決するというように考えていると余計に問題をこじらせるので、何を困っているのか、どうすれば解決するのかを様々な立場で考えられる人間がよいのではないでしょうか。そこが教育できることとできないことになってくると思います」

大城:資格を持っている社員を評価する部分は?
奈良:「資格があるからというだけで、その人を評価することはないです。資格を持っていないと仕事には携われませんが、そのフィールドで経験を積んで初めてプロになれます。弊社にとってのメリットは、資格を取ってもらう手間と時間が省けるという点につきます。
資格は会社の費用で取ってもらっています。宅建資格は最も大事な資格なので、学校へ行く費用を負担して毎日6時には終業させます。会社の会議室を自習室として開放し、朝と晩に勉強してもらっています。
(主力業務である)ソリューションは、宅建を持っているからできる仕事ではないと思っています。弊社の20代後半の若手社員も“宅建を持っていないと仕事にならないが、宅建を持っていても仕事ができるようにはならない”という認識です。社会人2、3年の経験で仕事の難しさを感じているのだと思います」

大城:必要な資格とそうでない資格は何か。
奈良:「建売では、二級建築士、インテリアコーディネーター、行政書士まで持っているといいと思います。二級建築士の資格があると、設計が分かるので、その土地に建てられる建物のボリュームチェックができるので強いです。インテリアコーディネーターは、付加価値を付けるためには医療関係とかに興味を持つことが大事になります。行政書士はローンを通すのに知識が非常に役に立ちます。
ただ、資格を持っていても即戦力として仕事ができるわけではないです。建築士の資格を持っていても、お客様が喜ぶ売れる間取りを作れるわけではないですから。
賃貸部門についても同様で、オーナーさんの方を向いているので、入居してもらう企画をどうつくるか、建築基準法や間取り、税の知識が必要になってきます。
賃貸物件のオーナーさんからは、収益不動産の追加取得や税金に関する相談が多いです。ファイナンシャルプランのような融資に関する相談も多いです」

大城:不動産関係以外で推奨する資格は?
奈良:「行政書士や、できれば税理士、ファイナンシャルプランナーの資格取得も推奨しています。電気工事士の資格もお客様の目の前ですぐに工事ができるので、取るように勧めています。 営業には簿記3級の資格を取ってもらうようにしています。貸借対照表、損益計算書が分からない人間にコンサルティングはできないというのが弊社の考え方です。簿記3級は一般教養だと思っています」

大城:資格に対する手当は?
奈良:「宅建、二級建築士については月2万円、ほかの資格については受験料と学校の講習料、合格時の祝い金を出しています。会社としては、社員には“お金がないから資格が取れない”とは言わせたくないです」

大城:ジョブローテーションについては?
奈良:「大型の物件で、賃貸募集や管理は若いうちに経験してもらって次のステップとしていますが、ソリューションについては案件ありきでやっています。一つの案件を一人の人間にやってもらっているので、結果的にジョブローテーションになっています。ですから、経験値が浅い人の中には辞めてしまう人もいます」

大城:御社の採用基準や欲しい人材像は?
奈良:「開業10年目までは中途がメインだったのですが、10年を境に新卒をメインにしています。中途の社員は、価値観が共有できないと辞めてしまいますし、価値観だけは教育できないので、新卒から当社の企業理念を学んでもらうという形に方向転換しています。
不動産を好きな人に入ってもらいたい。最初は楽しくないこともありますが、好きであれば勉強もして結果的に楽しくなっていきます。
単にお金が欲しい人は採用しませんが、最後は独立したいという人は歓迎します。人に食べさせてもらうという発想の人には厳しいと思いますし、そのような価値観は教育で変えることはできませんから」

【NKコンサルティング】 本社は千葉県市川市、08年に設立。不動産コンサルティング事業、新築分譲事業、新築賃貸事業、賃貸管理事業を展開する。

 

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