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中古ショップのワゴンから見つけたCDに、60年代に放送されたラジオ番組があった。
「時計屋のマサルくんと靴屋のケンちゃんの家は、向かい合って建っていた。近くの小学校に通う2年生の2人は、学校へ行くのも帰るのも、もちろん遊ぶのも、いつも一緒だった・・・。」 「昨年、2人の家の間に、30メートルの広い道路ができた。新しい道路の開通の日から、2人の生活が変わった・・・。」
「懐かしのキャシィ・ブラウン 荒木一郎スーパーベスト」の最後の曲として、1966年に始まった「星に唄おう」というラジオ番組を再現したものと記載してある。少年の幼いナイーブな甘酸っぱい思いを、当時ヒットした「空に星があるように」の曲に乗せたナレーションを収めたものだ。
荒木一郎がベスト盤にも入れたこだわりの放送、仲良しの2人を引き裂いてしまった新しい道路は、30数年前のそんな遠い昔の幻影に重なる。
大田区の羽田空港を起点に、世田谷区・杉並区を経由して北区岩渕町までの総延長44.2キロの環状8号線は、半世紀を掛けて半円の弧を描いた。
たくさんいたはずの「時計屋のマサルくんと靴屋のケンちゃん」は、もう40歳代後半になる。記憶の中の、鉄の水道管で塞がれた通行止めの看板が、やっと消えていく。 得られるだろう利便性の向こうに、数分で走り去ってしまう難工事のトンネルも、60年70年代の幼い思い出も、車の喧騒の中にまもなく、埋もれてしまうことだろう。
【 執筆 : 竹内 平 】
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