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第一回 【着工から50年 5月28日、環状8号線が全線開通】

「環状8号線がようやく全線開通に漕ぎ着けました」と4月7日、石原東京都知事は定例の記者会見の冒頭で、いつもより少しテンション高く話し始めた。

「8号線が、5月28日に全線開通いたします。27日には開通式を開催しまして、私も出席いたしますが、井荻トンネルから目白通り及び川越街道から首都高速5号線までの2区間が、最後まで未開通区間で残っておりましたけれども、半地下式のトンネルを通すなど難工事を経て、ようやく全線開通となりました」

「都内の環状道路の全線開通は、昭和60年の環状7号線の開通以来21年ぶりでありまして、これにより、混雑時には1時間かかっていた杉並区四面堂交差点から北区岩渕町までが、大体その半分の30分程度で行けるようになります」「着工は昭和31(1956)年で、50年もかかって、やっと出来たんですね。」

練馬区富士見台三丁目付近から
練馬トンネルを望む

環状8号線との出会いは、京王井の頭線・高井戸駅辺りの工事をしていた頃だった。

杉並ゴミ戦争の真っ只中でもあった。「列島改造論」「オイルショック」、本当に激動の時代だった。当時は、毎週のお得意さんまわり。激しく行き来する車道の狭い路肩を歩き、住宅街に入り込んだところに、お得意さんがあった。

道路が開通すると、道路の向こう側になってしまったその家は、遠くからも見えるようになった。生垣が切られ、庭に置かれ傾いたままのブランコが、なぜか寂しげに見えた。そして、なぜか間もなく引っ越してしまった。

練馬区富士見台三丁目付近
開通に向け工事を進めている
 (2006年5月14日撮影)

中古ショップのワゴンから見つけたCDに、60年代に放送されたラジオ番組があった。

「時計屋のマサルくんと靴屋のケンちゃんの家は、向かい合って建っていた。近くの小学校に通う2年生の2人は、学校へ行くのも帰るのも、もちろん遊ぶのも、いつも一緒だった・・・。」
「昨年、2人の家の間に、30メートルの広い道路ができた。新しい道路の開通の日から、2人の生活が変わった・・・。」

「懐かしのキャシィ・ブラウン 荒木一郎スーパーベスト」の最後の曲として、1966年に始まった「星に唄おう」というラジオ番組を再現したものと記載してある。少年の幼いナイーブな甘酸っぱい思いを、当時ヒットした「空に星があるように」の曲に乗せたナレーションを収めたものだ。

荒木一郎がベスト盤にも入れたこだわりの放送、仲良しの2人を引き裂いてしまった新しい道路は、30数年前のそんな遠い昔の幻影に重なる。

大田区の羽田空港を起点に、世田谷区・杉並区を経由して北区岩渕町までの総延長44.2キロの環状8号線は、半世紀を掛けて半円の弧を描いた。

たくさんいたはずの「時計屋のマサルくんと靴屋のケンちゃん」は、もう40歳代後半になる。記憶の中の、鉄の水道管で塞がれた通行止めの看板が、やっと消えていく。
得られるだろう利便性の向こうに、数分で走り去ってしまう難工事のトンネルも、60年70年代の幼い思い出も、車の喧騒の中にまもなく、埋もれてしまうことだろう。

【 執筆 : 竹内 平 】