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(2008. 7. 29号)
路線価は上昇したけれども・・・
 
  路線価が例年より1ヶ月早い、7月1日に公表されました(7月8日号)。
 昨年に比べると上昇率は鈍化の傾向が見られるものの、それでも全国平均で10%の上昇、個別の地域毎では東京圏が14.7%、大阪圏7.4%、名古屋圏10.9%の上昇、地方圏は横ばいという結果が出ています。路線価は公示価格の8割を基準に算定されますから、この結果は、昨年の不動産取引がいかに強い勢いであったかを物語る数字になっています。

 しかし実勢相場は様相が異なります。6月17日号の社説に解説記事が掲載されていましたが、国土交通省地価調査課の公表した『主要都市の高度利用地地価動向報告〜地価LOOKレポート平成20年第1四半期』によると、三大都市圏のうち郊外部では、マンションの販売不調を背景に横ばい傾向が拡大または下落傾向が現れ始めています。
 また現場に接する人であれば、流通市場は昨年後半から取引相場や投資環境が変化し、現在では需給バランスの調整局面に入り不透明感を増していると、誰もが肌で感じているところではないでしょうか。

 数字のギャップが気になります。路線価が高く、実勢相場が調整局面にある今、もし相続が発生してしまったら、残された相続人は大変なことになるかもしれません。
 路線価の上昇とともに相続税納税額は上昇します。一方で、納税のために不動産を売却しようとしても流通市場は冷え込んでいます。複数の不動産を処分しようとしても、ディベロッパーやハウスメーカーは在庫処分を優先していますから、買手はなかなか見つかりません。やむを得ず次の一手として物納を考えることもあるでしょう。
 しかし現在では、物納の取り扱いが厳しくなっています。相続税法が改正され、物納したくても物納できない、という状況が十分想定されるのです。

 物納を申請する場合、申請書のほか不動産登記簿謄本や測量図、境界確認書等の書類を用意する必要がありますが、これらの書類提出期限は、平成18年の改正により、最長でも1年間しか延長できなくなっています。
 境界確認書などは、隣地所有者の協力が不可欠です。隣近所との関係が良くなければ1年以内に同意が得られるとは限りません。むしろ、人と人との関係が希薄になっている昨今では、書類を提出期限内に用意することは、難しい作業といえるでしょう。物納の手続きを進めるには、相続前から周到な準備が求められる時代になっているのです。

 路線価は上昇、実勢相場は下落という価格トレンドの違いから、早期相続税対策といったものが、これまで以上に注目される1年になるかもしれません。


高橋満

高橋住宅センター株式会社常務取締役。マンション管理士 CFP
宅地建物取引主任者法定登録講習講師、法定実務講習講師等を歴任
神奈川県不動産コンサルティング協議会事業開発研究委員
『住宅ローンのことがわかる事典』(西東社)、『FP技能士2級攻略問題集』
(TFP出版)等 編集・執筆協力多数
http://www.tjc.jp